
木工DIYでは、材料を固定したり微調整したりするときに「ボルト・ナット」が大活躍します。
さらに、鬼目ナット(埋め込みナット)を使えば、木材にも金属ネジをしっかり効かせることができ、治具の精度や使い勝手が一気に向上します。
本記事では、DIYでよく使うボルト・ナットの活用や実例を紹介していきます。
ボルト・ナットを使うDIYのメリット

⚫︎強度が高く、しっかり固定できる
ボルト・ナットは締め付け力が強く、木材同士の接合はもちろん、金具やガイドパーツの取り付けでも安定した固定力を発揮します。
締め付けトルクを調整できるため、緩みにくく、負荷がかかる箇所や動きのある部分でも安心して使えます。
⚫︎繰り返し取り外しや再組み立てができる
木ネジと違い、ボルトは着脱しても穴が広がりにくく、何度も付け替えられるのが大きな特徴です。
治具の調整やパーツ交換を前提にした構造でも劣化しにくく、長く使えるDIY環境をつくれます。
⚫︎調整・微調整がしやすい
締め込み量を変えるだけで位置や圧力を細かく調整できるため、ガイドフェンスのストッパーや高さ調整、ガイドの位置決めなど、精度が求められる作業に最適です。
ノブボルトを組み合わせれば工具なしで操作でき、作業効率も向上します。
⚫︎規格が統一されていて汎用性が高い
ボルトやナットはJIS規格でサイズが統一されているため、太さ(M5・M6・M8など)や長さを選ぶだけで、ほとんどのパーツと互換性があります。
必要に応じてロックナットに変更したり、ノブに付け替えたりすることも簡単で、治具づくりの自由度が大幅に広がります。
DIYでよく使うボルト・ナットの種類
ボルトやナットにはいろんな種類がありますが、ここではDIYでよく使うタイプを紹介していきます。
各サイズをセットで持っておくと、わざわざ買いに行かなくても使いたい時のすぐ使えるため便利ですよ。
六角ボルト(スタンダードで使いやすい)
六角ボルトは最も一般的で扱いやすいボルトで、家具づくりから治具制作まで幅広く活躍します。
強度が高く、スパナやレンチでしっかり締められるため、固定力を重視したい部分に最適。ホームセンターでも常に入手しやすく、DIYではまず揃えておきたい基本の金具です。
皿ボルト(フラットに仕上げたい部分に)
皿ボルトは頭が木材に沈み込む形状のため、表面をフラットに仕上げたい部分にぴったりです。
出っ張りがないので、ジグやテーブル面など、材料が滑る場所にも安心して使用できます。見た目をすっきりさせたい家具づくりでも定番のボルトです。
蝶ボルト(工具なしで締め付けたいときに)
蝶ボルトは手だけで締めたり緩めたりできるのが最大のメリット。
頻繁に位置調整する治具や、仮組みを繰り返す場面にとても便利です。
作業中に工具を持ち替える必要がないので、スピーディに調整したい場合に向いています。
ノブナット・ノブボルト(手で調整したい位置に)
ノブナット・ノブボルトは、つまみ状の形をしており、蝶ボルトより手でしっかり握って回せるのが特徴です。
工具を使わずに力をかけられるため、位置調整が多い治具や、頻繁に固定・解除を繰り返す部分に最適です。
締め付けやすく操作性が高いので、テーブルソーの高さ調整ハンドルや、ガイドの固定ノブなど、DIYのカスタムにも幅広く活躍します。
ノブナットやノブボルトは簡単に自作できますので、ご興味ある方は下記記事を参考にしてみてください。
鬼目ナット(木材に金属ねじ山を作りたいときに)
鬼目ナットは木材に埋め込んで使う金具で、木材に強い金属ねじ山を作れるのが特徴です。
ボルトを繰り返し着脱する治具やノブ付きハンドルの取り付けに最適で、耐久性も大幅にアップします。
ボルト・ナットを使った自作治具の実例
①テーブルソーの天板取り外し

テーブルソーを自作する際は、刃の交換などのメンテナンスができるように、天板を取り外せる構造にしておくと便利です。
このとき、天板側に鬼目ナットを埋め込み、ボルトで固定する方式にしておけば、繰り返し脱着しても木材が傷みにくく、緩みも発生しません。
耐久性を保ちながらメンテナンスしやすい構造にできます。
②昇降式テーブルソーの高さ調整ハンドル

ボルトに通したナットとナットを締め合うことで、しっかり固定しつつ、取手部分をくるくると回転させることができるようになります。
取手部分が回るかどうかでハンドルの使いやすさは大きく変わりますので、詳しい作り方については昇降式テーブルソーの制作方法を解説した下記記事を参考にしてみてください。
③マイターソーステーションの「目盛り付きガイド」固定

木材に埋め込んだTスロットレールに Tスロットボルトを通すことで、ガイドを目盛りに合わせた位置へスライドさせ、材料を正確な位置で固定できます。
さらに、取手側の木材には 鬼目ナット を埋め込んでおき、取手を回すと Tスロットボルトが締まり、ガイドがしっかり固定される仕組みになっています。
工具なしで調整でき、カット位置の微調整も簡単になるため、マイターソーステーションがより使いやすくなります。

目隠しフェンスなど、同サイズの板を量産する際は、いちいち墨付けなどしなくても良いためかなり効率と正確さが上がりますよ!
④ボール盤のフェンスガイド

自作ボール盤テーブルに使うフェンスガイドでも、Tスロットレールと Tスロットボルトの組み合わせは活躍し、穴あけ材料の位置を正確に固定させることができます。
ガイドを使うことで、同じ位置にくり返し穴あけすることも可能になります。
ボール盤テーブルにご興味ある方は、下記記事で詳しい作り方を解説していますのでご参照ください。
⑤ボール盤の固定用クランプ

Tスロットレールにホールドダウンクランプを取り付けることで、手では抑えられないような小さい材料でもしっかり固定することができます。
⑥ジグソーテーブルの固定

ジグソーテーブルを作った際、ジグソーをボルトで固定しておくことで何度でもつけ外しができ、ハンド操作も行うことができます。
蝶ボルトやノブナットを使うことでより、簡単につけ外しができるようになります。
⑦トリマー用サークルカット治具

自作トリマー用サークルカット治具にノブボルトを使えば、簡単に加工したい円の大きさに調整することができます。
工具が要らないため、細かい調整が簡単にできますよ。
電動トリマーをお持ち方は、簡単に作れますので下記記事を参考に試してみてはいかがでしょうか。
⑧可動式の治具への活用

可動式の治具などのように、頻繁に緩めたり締めたりする場合は、蝶ナット・ボルトを使うのがおすすめです。
これにより、工具を使わなくても簡単に調整できるようになります。
初心者が失敗しやすいポイント
ボルト規格の違い(規格の混同)
DIY初心者が特に間違えやすいのが、ミリ規格(M規格)とインチ規格(UNC/UNF など)のボルトを混同してしまうことです。
見た目が似ていても、ねじ山の角度・ピッチ・径がまったく違うため互換性はありません。
例えば、M6(6mm)と1/4インチボルトは太さがほぼ同じに見えますが、ねじ山が噛み合わず、無理に入れるとナット側のねじ山を壊してしまいます。
治具づくりでは必ず以下を確認してから使いましょう。
- M規格(例:M5、M6、M8…)=日本の一般的な規格
- インチ規格(例:1/4″-20、5/16″-18…)=海外工具やアクセサリーに多い
特に輸入品のTスロットボルトや治具パーツはインチ規格が使われていることがあるため、購入前に規格をチェックしておくと失敗を防げます。
ボルト長さの選び方
適切なボルトの長さを選ばないと、締め付け不足や突き抜けの原因になります。
目安としては「板厚+ワッシャー+ナット分でちょうど噛み合う長さ」。
余りすぎると見た目も危険性も悪くなるため、必要最小限の長さを選びましょう。
木材にボルトを使う際のザグリ加工

木材表面にボルトやワッシャーの頭が飛び出していると、材料が引っかかったり、水平な面に影響が出ます。
そこで必要になるのがザグリ加工です。
ドリルで浅い穴を掘り、ボルトの頭を埋める加工のことで、テーブル面や治具のガイド部分では特に重要です。
鬼目ナットの向き・打ち込み方向の注意
鬼目ナットは正しく打ち込まないと強度が出ず、すぐ抜けてしまいます。
打ち込むときは下穴を正しいサイズで開け、ゴムハンマーでまっすぐ叩き込むことが重要です。
まとめ
ボルトやナットは、ただ「固定する」だけでなく、治具づくりや可動機構の調整など、DIYの可能性を大きく広げてくれる便利な金具です。
使い方を工夫すれば、精度の高い作業や快適な操作性も実現できます。
今回紹介した内容はその一部にすぎませんが、アイデア次第で活用の幅は無限大です。
ぜひ、さまざまな場面でボルト・ナットを取り入れてみてください。









